アンラッキー
            原作:フレドリックブラウン
            アランフィールド
             
             
             
 ラルフNCー5は、監視スクリーンのアルクトゥルス第4惑星を見て、
安堵あんどのためいきをついた。コンピュータが、そう、教えてくれたのだ。
アルクトゥルス第4惑星は、ここでは、唯一の、人が住んでいる、居住
可能な惑星で、となりの太陽系まで、数光年離れていた。
 彼は、食料を必要としていた。燃料や水は、じゅうぶんだったが、めい
おう星の兵站へいたん部は、彼の偵察艇に物資を補充する際、食料を補充しわすれ
た。宇宙マニュアルによると、アルクトゥルス第4惑星の原住民は、友
好的だった。頼めば、なんでも与えてくれるという。



 

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 マニュアルには、この点について、詳細に記述されていた。自動操縦
で、着陸を指示すると、アルクトゥルス星人に関する記述を再読した。
「アルクトゥルス星人は」と、ラルフNCー5。マニュアルを、声に出
して読んだ。「ヒューマノイドではないが、非常に、友好的である。上
陸したら、乗員は、欲しいものを頼めばいいだけだ。欲しいものは、自
由に、すみやかに、議論することなく、与えられる。
 原住民とのコミュニケーションは、しかし、紙と鉛筆でおこなわれる
必要がある。というのも、彼らには、発声や聴覚のための、いかなる器
官もないからだ。彼らは、地球言語の読み書きを、かなり、流暢りゅうちょうにこな
す」
 ラルフNCー5は、なにが食べたいか、考えただけで、口に唾液だえきがあ
ふれてくる気がした。なにしろ、この2日間は、まったく、なにも食べ
ていなかったからだ。その前の5日間もわずかしか食べていなかった。
1週間前に、兵站へいたん部が食料を補充しなかったことに、初めて気づいたか
らだ。
 ごはん、すばらしいごはんが、心の中に、いろいろと浮かんでは、消
えた。
 偵察艇が着陸すると、アルクトゥルス星人は、10人あまり━━━た
しかに、彼らは、ヒューマノイドではなかった。12フィートの背丈で、
6本の腕、肌は、明るい赤紫あかむらさきだった━━━彼に近づいてきて、リーダー

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がおじぎをして、紙と鉛筆を手渡した。
 急に、彼は、自分がほしいものにやっと気づいた。紙に急いで書いて、
返した。それは、彼らの手から手へ、まわされた。
 すると、いきなり、彼は、らえられ、腕は切り落とされた。はりつ
け柱に縛られ、まわりには、小枝やたきぎが積み上げられた。彼らのひ
とりが、火をつけた。
 ラルフNCー5は、大声で抗議したが、アルクトゥルス星人によって、
却下された。抗議が、聞こえなかったからではなく、聴覚器官そのもの
がなかったからだった。彼は、苦痛のために叫んだ。そして、すぐに、
叫ぶのをやめた。
 宇宙マニュアルの記述は、まったく正しかった。アルクトゥルス星人
は、地球言語の読み書きが、かなり、流暢りゅうちょうだった。しかし、書かれたこ
とが、あいまいだと、かならずしも、好意的に解釈してくれるとは限ら
なかった。宇宙マニュアルの記述は、この点について、じゅうぶんでは、
なかったかもしれない。
 ラルフNCー5は、「あつあつのステーキ」と書いたのだが、あつあ
つのステーキがほしいのか、あつあつのステーキにされたいのかが、あ
いまいだった。アンラッキーにも、彼は、望みどおりに、あつあつのス
テーキにされた。
 

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                            (終わり)


















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