お手伝いさんはジーナデービス1
          ルースベネット、マイケルJウェイトン
           
            登場人物
 
エリス:キートン家の母、42、2階で出産療養中。(お休み)
スティーブン:父、44、テレビ局でドキュメンタリー番組を製作。
アレックス:兄、18、優秀な成績で、大学に進学。努力家タイプ。
マロリー:姉、16、勉強よりもファッションが得意。
ジェニファー:妹、13、子どもが生まれると、のけ者にされると心配。
カレン:背の高い女性、32、お手伝いさんに応募。
 
            プロローグ
 




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 キートン家の居間。夕方。
 テーブルに、アレックスとスティーブン、それに、お手伝いさんに応
募してきた65くらいの女性。
「というわけで」と、スティーブン。「女房が休んでるしばらくの間、
うちのことをやってもらうことって、ふつうの主婦の仕事と変わりませ
んが、買い物とか、料理とか、その程度のこと。給料は、その広告に出
したとおり!」
「0がひとつ抜けてるわよ!」と、女性。新聞広告を見ながら。
「いや、ええ、これで間違いありませんね」と、スティーブン。広告を
確かめて。
「でも、お宅、こどもは3人いるんでしょ?こんな給料じゃ、ひとりの
面倒みるんでやっとといったとこよ!あと、ふたり分増やすか、じゃな
きゃ、ふたり追い出すしきゃないわね!」
「いや、ま」と、スティーブン。アレックスと顔を見合わせた。「子ど
もは、あまり、お好きじゃないようですね?」
「子どもは諸悪のもとよ。ぶちゃピーピー泣くし、不潔で不衛生、ばい
菌だらけの疫病神!あいつら病気のもと。病気は国を滅ぼし、地球を滅
ぼす。ついには、全宇宙を破滅させる」
 アレックスとスティーブンは、しばらくの間、笑顔が凍りついた。
「ああ、貴重なご意見をどうも!」スティーブンは、立ち上がって、玄

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関のドアをあけた。「じゃ、あとでご連絡します」と、右手を差し出し
た。
 女性は、握手を無視して立ち去った。
 ドアが閉まると、アレックスが言った。
「ああ、こわかった!」
 
               ◇
 
 マロニーとジェニファーが走って室へ入って来た。
「ダディ、あとひとり来てもらってるけど」と、マロリー。笑顔で楽し
そうに。
「ああ」と、スティーブン。アレックスに。「今度はいいかもね」それ
から、ジェニファーに。「じゃ、彼女に入ってもらって」
「はい、どうぞ」と、ジェニファー。
 派手なシャツをた、恰幅かっぷくのいい男が堂々と入って来た。
「マックス」と、ジェニファー。笑いながら。「入れずみ見せてあげて」
「またかよ」と、マックス。シャツをまくろうとする。
「ああ、いや」と、スティーブン。「結構です」
「なんで、ただでいいよ!」と、マックス。
「いえいえ」と、スティーブン。それから、ふたりに。「娘たちは、上

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で、ママの相手をしてやってくれないか」
「オーケー」と、マロニー。それから、マックスに。「じゃあね」
「またな、ドールフェース!」と、マックス。
 ふたりは、ドールフェースと呼ばれて、喜んで、階段を昇って行った。
「スティーブンキートン」と、スティーブン。マックスは握手した。
「こっちは、息子のアレックス」アレックスとも握手した。
「マックスシュナイダー。いい家だな」
「どうぞ、どうぞ」と、スティーブン。3人はテーブルにくと、
た。「あなたが、そうじや洗濯を?」
「そうそう」と、マックス。「あと、なにとか」
「料理は?」と、スティーブン。
「生き物なら、なんでも、刺身にできる」
「じゃ、子どもはどうです?」
「大好き、人の家庭の子、もっと好き」
「いや、これは、形式的な質問ですから、気にしないで━━━あの、刑
務所にお世話になったことは?」
「たった、6年!」
「じゃ、返事はのちほど」と、スティーブン。立ち上がって、ドアに向
かった。
「この家には、なんと言うか、あったかいもんがある」と、マックス。

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立ち上がって。「いいね、これから冬場に向けて」
 スティーブンは、手を差し出して、マックスと握手した。「それじゃ、
今日はすいませんでした」
 アレックスも握手したが、手を引っ張られてのけぞった。
「オレにドリルのボタンを持たせてみな」と、マックス。ドア口で。
「びしって決めるから」
「ああ、そうでしょうね」
「見せてぇな」
 マックスは、手を振って帰って行った。
 
               ◇
 
「さてと」と、スティーブン。ドアを閉めて、アレックスに。「いささ
か疲れたね。あとは、おまえに任せるから、適当に質問して帰ってもら
え。どうせ、ヘンなのばっかりだろうけど、いい人が来たら呼んでくれ」
スティーブンは自室の仕事に戻るため、2階に上がって行った。
「分かった」と、アレックス。ソファでくつろいだ。
 そのとき、玄関にノックの音。
「おっと、ハイ、どうぞ」と、アレックス。玄関のドアをあけた。
 ドア口に立っていたのは、ブルーのドレスをた、背の高い女だった。

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ザ・フライの頃の、ジーナデービスそっくりで、思いっきり笑顔だった。
「ハイ」と、女。「カレンニコルソンよ。募集を見て来たんだけど」
 アレックスは、カレンを見たまま頭がぼーっとなって、しばらく口が
きけなかった。アレックスの仕草は、バックトゥザフューチャーの頃の
マイケルJフォックスに似ていた。「そう?」
「ええ」
「ああ、どうぞ、入って!座って!」と、ドアを閉めて、カレンにイス
をすすめた。
「ありがとう」カレンは、テーブルにいた。
「なにするんだっけ?」と、アレックス。やっと、テーブルにいて、
質問用紙を広げた。「それじゃ、2・3質問しちゃうけど、あんたには、
黙秘権がある━━━」自分でもおかしなことを言ってることに気づいて。
「あ、だれかの推薦状は?」
「ないわ」と、カレン。笑顔で。アレックスは、用紙にOKと記入した。
「あ、じゃ、お手伝いさんの経験は?」
「ないわ」と、カレン。笑顔で。アレックスは、また、OKと記入した。
「料理はできる?」
「料理?だめ」と、カレン。笑顔で。
「それでは」と、アレックス。「じゃ、経験もないし、推薦状もないし、
料理もできないわけですね?」

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「そうなの」と、カレン。笑顔で。
 アレックスは、よく考えてから言った。
「採用!コングラチュレーション!」
 カレンは、それを聞いて、喜んでアレックスと握手した。






 
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 キートン家のダイニングキッチン。朝。
 スティーブンが入って来て、キッチンで自分用のコーヒーカップを出
した。追うようにアレックスも入って来た。
「ねぇ、ダディ、見れば一発で気に入るよ!」と、アレックス。「見る
からに家事をバリバリやってくれそうなタイプだったし」
「そういうことじゃなくて」と、スティーブン。「なぜ、一言、相談し
てくれなかったんだって、言ってるんだ」

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「だって、2階で仕事していたし、こんなつまらないことで中断させち
ゃまずいでしょ?それに正直言って、そこまで頭が回らなかったよ、ぼ
ーっとしていて」
「なんだそれは?」スティーブンは、頭をかしげた。
 そこへ、学校へ行くかばんを持って、ジェニファーとマロリーが入っ
て来た。
「ニコルソンさん、もう起きた?」と、ジェニファー。
「いや、まだだ」と、アレックス。
「見るからに、おばさんというタイプじゃないでしょうね?」
「おまえな」と、アレックス。「人を、そういうルックスで決めるもん
じゃないよ!顔なんか付いてりゃいいの!オレなんか、仕事に一番向い
てそうな人を選んだだけさ。どんな顔をしていたかも、忘れちゃったく
らいだぜ」
 そのとき、裏口のドアをノックして、カレンが現れた。
「おはよう」と、カレン。やはり、笑顔いっぱいだった。
「待ってたよ、カレン」と、アレックス。
「しっかり覚えてるじゃない?」と、ジェニファー。
「あ、ダディに」と、アレックス、みんなを紹介した。「ジェニファー、
マロリー」そしてカレンを両手で示して。「こっちは、新しいお手伝い
さん!」

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「カレンニコルソンです、どうぞよろしく」と、カレン。
「ハイ」と、3人。
「妹さんがいたなんて、知らなかったわ」
「忘れてた!」と、アレックス。ジェニファーとマロリーは渋い顔をし
た。
「あ、スクールバス」と、マロリー。ジェニファーと学校へ向かった。
「じゃ、あとでね」と、ジェニファー。
「では、行ってきます」と、マロニー。
「オーケー、バイバイ」と、カレン。
 
               ◇
 
 
 
 
                    (第三_ニ_六話 つづく)





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