フェルマーの予想
ケイコオブライエン
プロローグ
「今日は、フェルマーの予想というのを、やります」と、ケイコ先生。
教室には、生徒は、ジェイクとノーグだけだった。
「他の生徒たちは、どうしたんですか?」と、ジェイク。
「そうね、みなさん、ベイジョーに戻られたようね」
「ドミニオンが、いつ攻めてくるか知れないご時勢では」と、ノーグ。
「この教室も、今日で最後かもしれません。私の専門は、植物学なので、
今まで、私も苦手な、数学やコンピュータ演習やらは、つい後回しにし
てきてしまったので、今日は、3人でやってみましょう。テキストは、
パッドに入っています」と、ケイコ先生は、ふたりにパッドを渡した。
「このフェルマーの予想って、三百年前に証明されたんでは?」と、ジ
ェイク。「たしか、ダックス大尉が別証明にチャレンジしてるって」
「そのようね。証明自体は、中学生では難しすぎるし、私も理解できま
せん。今日のテキストは、やはり三百年前頃に書かれた未発表のもので、
Googolという検索サイトのキャッシングに残されていたものです」
「キャッシングって、ラチナムに換金するってことですか?」と、ノー
グ。
「そういうことではないでしょうね。なんらかのデータベースというこ
とらしいです」
「パッドに入っているテキストの最初の図形は?」と、ケイコ先生。
「はーい、ピタゴラスの定理です」と、ジェイク。
「そうです、直角三角形の斜辺の二乗が、他の辺の二乗の和に等しいと
いうものですね。次に書かれているのが」
「フェルマーの予想と呼ばれていたもので、nが3以上だと、フェルマ
ー解が存在しないという、非存在定理です」
「非存在ってなんですか?」と、ノーグ。
「先生にも、正直なところ、よくわからないわね、今日の演習でやるの
は、むしろ、存在を見つけるプログラムを動かしてみるだけです。非存
在は、そこで見つからなければ、存在しないのかもしれないということ
かしら?」
「次の図は、なんですか?」と、ジェイク。
「この図は、テキストによると、y<1、x<1として、zもz=1と
すると、0と1の間の2次元の図に書けて」
「あ、ちょうど、ピタゴラスの二乗は、円の右上にあたるってことかな」
と、ジェイク。
「そのようね。n=3とすると、少し膨らんで、n=∞の極限では、四
角の右上になるらしいわ」
「たしかに、x=3/5、y=4/5とおくと、xの二乗とyの二乗を
足すと、25/25になって、z=1になってますね」と、ノーグ。
「さすが、ノーグは、フェレンギだけあって、いつもラチナムを数えて
いるから、計算にはやたら強いね!」と、ジェイク。
◇
(つづく)