恐怖のウイルス
マイケルマクグリービー、ナレンシャンカー、
サリーケイビス、アイラスティーブンベア
プロローグ
チーフオブライエンは、エアロックの修理に手間取っていた。
「まだ、開かないのか!」と、エアロックから大声がした。
「いくら怒鳴っても、無駄だ。できるだけ早く出してやるから待ってい
ろ」と、チーフオブライエンは言ってから、トランシーバに指示した。
「参ったな。パワー連結部を別ルートで試してみろ」
「ミスターオブライエン」と、トランシーバから声。
「インターロックサーバを起動させてみろ」
「ミスターオブライエン」
「あ、ジャヒール艦長。彼らは、もう1時間以上もあのエアロックに閉
じ込められているんですよ。申し訳ありませんが、あれを開けるまで待
っていてもらえませんか。そのあと、お伺いしますから」
「しかし私はもう2日も前から、船の反物質変換器の調整を頼んでいる
のだ」と、トランシーバの声。
「ええ、メンテナンスの予定が遅れていましてね」
「言い訳は聞きたくない。私はこれからターメン5を輸送しなければな
らない。だめにならないうちに、ワープ1以上で行く必要があるのだ」
「わかりました。今日中に修理クルーをそちらに派遣いたしましょう。
それ以上は、約束できません」
「しかし、君の約束など、あてにならんからな」
「ダックスよりオブライエン」と、トランシーバから別の声。
「こちらオブライエン」
「今、時間ある?実はラボでトラブルなのよ」
「すぐ行きます」
チーフオブライエンは、ラボに向かった。
「わざわざ悪いわね」と、ダックス。
「なんで外にいるんです?」
ジャッシアダックスは、しようがないという仕草をした。
「EPSコンバータを調べました?」と、オブライエン。
「ええ、まず最初にね」と、ダックス。
「じゃ、インテンシティブリッドは?」
「異常ないわ」
「それじゃ、補助フェーズモジュレータかもしれない。先週もメインパ
ワーコアで、そこが、いかれましてね。やっぱりそうだ」
「ふん」
「他に、用はありません?」
チーフオブライエンは、司令室に戻ると、コントロールパネルの修理
に取り掛かった。
「ナビゲーションコンピュータが3日前から動いてくれないのよね。ア
ンゴシアセクターのスターチャートを出せっていうと、ブリシアセクタ
ーのを出してくるんだから。なだめてもすかしても、まともに動かない
のよ」と、キラ少佐。
「これで、どうかな?やってみてくください」と、オブライエン。
「はは、ご機嫌が直ったようね」
「ああ、ううん」チーフオブライエンは、少しめまいがした。
「少し休んできた方がいいわよ」と、キラ少佐。
「へへ、そんな暇ありませんよ。でも、5分だけでいいですから、ゆっ
くりしたいですよ」と、オブライエン。
「ああ!チーフ。レプリケータの修理は、まだなのか?」と、シスコ大
佐。
「ああ、申し訳ありませんでした。なにか忘れていたとは思っていたん
ですよ。テクニカルチーフたるもの、仕事が残っているのに、座っての
んびりしていては、いけませんね。ハハハハ、直ちに修理いたします」
マイルズオブライエンは、レプリケータの修理に取り掛かった。
「レプリケータの修理は?コンソールが壊れちゃったの、チーフ。貨物
ステーションに配属願いを出すか。貨物なら苦情も言わないしな」
「ホットコーヒー。砂糖入りでミルクなし」
レプリケータは注文に応じた。
1
オドーは、クワークの店に立ち寄った。
「なぁ、おい、クワーク。私の見たところじゃ、最近、客足が、にぶっ
ているんじゃないか」と、オドー。
「にぶっている?ここんとこ3日間、客なんてほとんど来ないよ」と、
クワーク。
「うんうん、そりゃ大変だ。景気が上向かなきゃ、このプロムナードも
閉鎖かもしれんな」
「なんだか嬉そうだな」
「おまえがいなくなりゃ、私の仕事もずっと楽になるのも否めないから
な」
「楽になるもなにも、おまえが今やっている保安チームの仕事も、あが
ったりなんだぞ。他人の不幸を笑ってないで、自分も失業しないように
頭を働かせな」
「クワーク!なんだ、このコーリアンシチューは!」と、店の奥にいた
客のオルレアン人。
「えー、もしお味がお気に召さないのでしたら、お取替えいたしますよ。
お客様のお好みに合うようなものに」と、クワーク。
「いいから、おまえも一口食ってみろよ。そうすりゃ、わかるから」
「あう、あう」オルレアン人は、無理やりクワークに食わせようとした。
「どうだ!責任持って、最後まで食え!」
「まあまあ、その辺で」と、オドー。
「食えってんだよ!」
「あう、あう」と、クワーク。
「もう、よせ!気が済んだろ。おとなしく帰れ!」と、オドー。
オルレアン人は、帰っていった。
「これで、あの客は、もう二度と来ないだろうな」と、オドー。
「レプリケータのせいだ。早く直さないと、商売にならない」と、クワ
ーク。
「オブライエンに頼めば、すぐ直るぞ。レプリケータをコマンドレベル
で稼動させるだけだろう」
「もう、とっくに頼んであるんだよ。なるべく早く直してくれるとは言
ってたがな」
「うんうん、じゃ、いつになるかわからんな。チーフは、とにかく多忙
だからね」
オドーが行ってしまうと、クワークは、カウンターの奥のコンソール
に向かった。
「コンピュータ。ステーションの区画図を出せ。修理を終わり、コマン
ドレベルで稼動しているレプリケータをすべて表示せよ」
「その情報は、セキュリティクリアランスファイブ以上の方のみ入手可
能。セキュリティク証明をお入れください」と、コンピュータ。
クワークは、周囲をうかがいながら、引き出しに隠してあったクリア
ランスをセットした。
「クリアランスを確認」と、コンピュータ。
コンソールには、いくつかのレプリケータの位置が表示された
◇
オブライエンは、司令室のレプリケータの修理を済ました。
「どうぞ司令官。今度こそ、お好みに合うと思いますよ」と、オブライ
エン。
「ありがとう、オブライエン。助かったよ」と、シスコ大佐。
「いや、いいんですよ。ステーションのいたるところで、レプリケータ
の故障が相次いでいましてね」
「体は大丈夫か?」
「なんだか暑いですね。環境制御がまたうまくいっていないのかな」と、
オブライエン。
「そうだ、奥さんによろしく。ジェイクが、いい先生だと、よく話すん
だ」と、シスコ大佐。
「ええ、どうもありがとうございます。妻もジェイクのことをよく話し
ますよ」
「あ、待ってくれ」
「は?」
「まだ、いたずらしているのか?」と、シスコ大佐。
「いや、その、ジェイク君はまじめにやっているようです」と、オブラ
イエン。
「ああ、心配でね」
「失礼します」
◇
キラ少佐とダックス中尉は、プロムナードを歩いていた。
「少佐」と、男性が挨拶した。
「どうも、ダックス」と、別の声。
「この感じ忘れていたわ」と、ダックス。
「あら、どんな感じ?」と、キラ。
「女だって感じ。女になるのは、80年ぶりなの。注目の的だわ」
「慣れるのにしばらくかかるかもね」
「いえいえ、とっても気分がいいわ」
「キラ少佐、ダックス中尉。おふたりとも、私のパーティに参加なさい
ませんか。大歓迎いたしますよ」クワークがカウンタから声を掛けた。
「ほほ、いったい何の騒ぎなの?客を千人騙した記念のお祝い?」と、
キラ。
「ベイジョー人にもユーモアのセンスはあるんですね。いや、実は、今
日やっと店のレプリケータが直ったんで、そのお祝いをね。いかがです、
ご馳走しますよ。ダプルウィップルのアイダニアンプディングなんかど
うでしょう」と、クワーク。
「少佐、どうします?」と、ダックス。
「私は司令室に戻らないと。ダックス中尉は、どうぞご遠慮なく」と、
キラ。
キラ少佐は、司令室に戻った。
「チーフ」と、キラ。
「なんですか、キラ少佐」と、オブライエン。
「あ、あなた、少し休んできた方がいいわよ」
「いいえ、大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」
「疲れているのに悪いんだけど、どうやら、第3ターボリフトがまた壊
れたみたいなのよ、ジョークよ、チーフ」と、キラ。
「少佐、ひばりの下が血みどろだ」と、オブライエン。
「え?」
「鳥は空高くはるか彼方に。黒雲のスキャットを聴き」
「チーフ、いったい何を言いたいわけ?」
「乱気流を早く廻って。沈み行く港を閉鎖するんだ。足首を試して。サ
ウンドが光をリセット。ディナーに虫を」
「チーフ、待って」
「いつ?」
2
ドクターベシアは、医療室でオブライエンを診察していた。
「コンピュータ。神経映像スキャンを続けて。視覚皮質を刺激してくれ」
と、ドクターベシア。
「視神経の反応はすべて異常なし」と、コンピュータ。
「聴覚を刺激するんだ」
「生理的損傷はありません。脳の機能の数値も、すべて正常の範囲内で
す」と、コンピュータ。
「ナース」ドクターベシアは、看護婦を呼んだ。
「はい」と、ナース。
「オブライエンの今までの病歴を調べてくれ」
「はい、ドクター」
オブライエンは、コンピュータパッドに文字をタイプして見せた。
「なーに、これ、どういう意味なの?」と、キラ。
「僕の方が聞きたいですよ」と、ドクターベシア。
「限界を撃て。闇を燃やせ。本当の愛だ」と、オブライエン。
「チーフ、まだ診察が」
「道のリンクを、完璧だ、道のリンクだ」
「いったい、どうなっちゃったの?」と、キラ。
「おそらく、一種の言語障害だと思います。知覚の機能不全で、視聴覚
の刺激が脳に正しく伝わっていない。思考回路自体は正常なんです。し
かし、言葉で、他人とコミュニケーションをとることができなくなって
いる」と、ドクターベシア。
「勝利は限界を撃ち、霧に覆われて目覚める。単純な躊躇なんだ」
◇
シスコ大佐は、司令室でドクターベシアの報告を受けた。
「よくわからんね、ドクター。言語障害だというが、検査結果はすべて
異常なしだぞ」と、シスコ大佐。
「言語障害は脳に損傷を受けた時にみられる症状ではなかった?」と、
キラ。
「そうです。頭部を殴打された時に見られますが、チーフはあてはまり
ません」と、ドクターベシア。
「過去に似たような症状が出たことはないの?」
「一度もありません。何度も調べましたが」
「原因はわからないのか?」と、シスコ大佐。
「今のところは」と、ドクターベシア。
「視点を変えよう。キラ少佐、チーフ個人の勤務日誌を調べ、過去24
時間、どこでなにをしたか調べるんだ」
「もう、調べてみましたが、それこそ、ステーションじゅうに行ってま
す」と、キラ。
「それを、ひとつづつ、すべて当たってみてくれ。ダックス、当面は、
オブライエンの代理は君がやってくれ」
「ええ、でも」と、ダックス。
「不都合でもあるのか?」と、シスコ大佐。
「ええ」
「ダックス」
「ごめんなさい、ベンジャミン、私には、やっぱり、見るがいい、愚か
者の涙。嵐がやって来る」
◇
ドクターベシアは、医療室で、シスコ大佐に報告した。
「言語障害が伝染するというのは、実質上ありえません。それが伝染し
たということは、一見、言語障害にみえても、実は、なんらかの病気だ
と考えざるを得ないのです。そこで、大尉とチーフの神経細胞をスキャ
ンしたところ、ふたりとも側頭葉からこれが見つかりました」
「ウイルスか?」
「このウイルスは、神経細胞の連結部分に潜み、情報伝達を攪乱するの
です。たとえば、これを見ると、目から脳へ映像が送られ、トリコーダ
という言葉と結びつきます。このウイルスは、そこを邪魔するのです」
「つまり、トリコーダを見ても、口からは別の言葉が出るのか。窓とか」
「その通りです」
「ドクター、また、患者が出ました」と、看護婦。
「夜が流れだした」と、ひとりの患者。
「月が瞳を閉じ、トンネルの向こうから太陽が来たんです」と、別の患
者。
「ドクター、今からステーションを緊急隔離体制に置こう」と、シスコ
大佐。
「わかりました」
◇
オドーは、クワークの店に立ち寄った。
「クワーク、いったいこれはどういうことになっているんだ?」と、オ
ドー。
「なんか変かい?」と、クワーク。
「客が戻ってきたみたいじゃないか」
「へへ」
「しかし、おかしいな、追って通達があるまで、どの店も営業を中止さ
れたはずだ」と、オドー。
「必要不可欠な事業については、許可されているんだぜ」と、クワーク。
「おい、この店のどこが必要不可欠なんだ?」
「客はどう言うかね。この隔離体制で、みんなうんざりしているんだ。
少しばかり気晴らしできる場所が必要だよ」
「自分のクォータにいた方が安全だ」
「クワーク、このコーリアンシチュー、まさに絶品だぜ」と、店の奥に
いた客のオルレアン人。
「弟のロムがレプリケータを直してくれたんでね」
「ああ、そいつはよかったな」
◇
シスコ大佐は、プロムナードにいたジェイクに声を掛けた。
「ジェイク、まだ、家に帰っていなかったのか?」
「ごめん、ノーグと遊んでいたんだ。父さん、この隔離体制、すぐ解除
になるんでしょ?」と、ジェイク。
「ああ、予防的な措置だからな」
ジャヒール艦長は、プロムナードに出てきた。
「もしそうならいいんだがね、司令官」と、ジャヒール艦長。
「まっすぐ帰れよ。夕食には帰る。ジャヒール艦長、船から出てこられ
ては困ります」と、シスコ大佐。
「待機命令が出ていることは承知している」
「なら、なぜここに?」
「司令官、ステーションから飛び立つ許可をいただきたい」
「却下します」
「私の部下は、まだ、誰もウイルスに感染していない。それに、すぐに
出発しなければ、積荷のターメンサーシアがダメになるんだ」
「艦長、ご自分の船にお戻りください。すぐに」
「お願いだ、私は、あんな病気になりたくないのだ」
「申し訳ないが、この病気の治療法が見つかるまでは、出発は許可でき
ない」
◇
クワークは、クルークォータにあるレプリケータの前にいた。
「コンピュータ、そうだな、手始めに、フェレンギスターダスタを頼む。
うんと強いやつをな。完璧だ」と、クワーク。
オドーは、壁の変身から現われた。
「へへ、ワゴンの調子がおかしいもんでね」と、クワーク。
「許可なくして、クルークォータに立ち入るのは、違法行為だぞ、クワ
ーク。レプリケータを使いたいなら、申請すればいいだろう」と、オド
ー。
「頼まずにすむなら、神をもだませという諺 がある。へへ、なんでわ
かったんだ?」
「ロムがレプリケータを直したって言っただろ?」
「ああ」
「ロムに直せるものか。曲がったストローも直せない奴だぞ」
「その通り、ロムは、とろい野郎だ、明日こそ、くびにしてやるぞ」
◇
ドクターベシアは、司令室で、シスコ大佐に報告した。
「患者の血液中のウイルスレベルから言って、感染経路は経口だと思い
ます」と、ドクターベシア。
「食べものからということか?」と、シスコ大佐。
「そんなことはありえないわ。食べ物はすべてレプリケータによって供
給されているのよ。バイオフィルタでウイルスなどの汚染物質は除去さ
れているはずだわ」と、キラ。
「少佐、ステーションじゅうのレプリケータを調査してみたんですが、
すべてコマンドレベルで汚染されています」と、ドクターベシア。
「しかしみんな同じものを食べているのに、なぜ症状が出ないんだ?」
と、シスコ大佐。
「このウイルスは変幻自在でしてね、潜伏期間も人によってかなり異な
るようなのです」
「勤務日誌によれば、オブライエンは、発病する寸前にコマンドレベル
のレプリケータを修理しているんです」と、キラ。
「テクニカルクルーにそのレプリケータを調べさせよ。レプリケータは
ずべて使用禁止だ。感染が広がるのをかなり防げるかもしれない」と、
シスコ大佐。
「それは、もう、無理だと思いますね。すでにステーションじゅうから
患者が出ていますから」と、ドクターベシア。
「ステーションじゅうから?」と、シスコ大佐。
「クワークのせいですよ。あいつは、クルークォータのレプリケータを
勝手に使い、店の料理は全部そこから出していたらしい」と、オドー。
「待てよ、これほど短期間に、そこまで広い範囲に散らばっているとす
ると、もしかすると」と、ドクターベシア。
「なんだね、ドクター」と、シスコ大佐。
「空気を分析させたんです」
「あのウイルスか?」
「空気伝染する変種が出現しています」
「ということは?」
「ステーション全体が汚染されてるってことです」
3
シスコ大佐は、コンピュータに報告した。
「ステーション日誌 宇宙暦 46423・7、ディープスペースナイ
ンにいる人間の6割が、ウイルスによる言語障害を発病、我々は、標準
隔離体制を発動、追って通知するまで、外部から、当宇宙ステーション
への宇宙船からの接触を禁止した」
キラ少佐は、レプリケータの配線の奥で汚染装置を発見した。
「レプリケータのパターンジェネレータに取り付けてありました」と、
キラ。
「オブライエンは、修理中、これを作動させてしまったんだな」と、シ
スコ大佐。
「ベシアによれば、その装置は、変則プログラミングシーケンスを出現
サブルーチンに導入するんだそうです。つまり、わかりやすくいうと、
ウイルスを分子レベルでレプリケータの食べ物の中に、直接入れるわけ
です」
「明らかに、破壊活動だ」
「カーデシアの破壊活動です」と、キラ。
「なぜ、そう言いきれる?」と、シスコ大佐。
「動力にターボリニアコアを使っています。これは、カーデシアの技術
だわ」
「ベシアより、シスコ司令官へ」と、トランシーバの声。
「こちらシスコ」
「司令官、至急、診療室までいらしていただけないでしょうか」
「よし、すぐ行く」
シスコ大佐は、医療室に着いた。
「どうしたんだ、ドクター」
ジェイクは、看護婦に付き添われて入ってきた。
「ジェイク!」と、シスコ大佐。
「左側、もっとよくなる、コントロール、希望がすべて」と、ジェイク。
「使っていないクルークォータを病室に改造しましたので、ジェイク君
はそちらに」と、ドクターベシア。
「私が連れていこう、大丈夫だ、きっとすぐよくなる」と、シスコ大佐。
「ああ、司令官。お見せしたいものを発見しましたので、後でまた」
「うん」
病室では、多くのベットに患者が寝ていた。
「かならず直りますからね。ゆっくり、お休みなさい」と、看護婦。
「気持ちはわかるけど、あわててもしょうがないでしょ」と、別の看護
婦。
「なあ、おい、酒代、金だ、おれのもんだ、よこせ」と、クワーク。
「ああ」
「やあ、クワーク、さすがに、おまえも、この病気には勝てなかったか
?」と、シスコ大佐。
「フェレンギ人の免疫力を甘くみないでもらいたいね、おれは、ただ、
見舞いにきただけなんだ。仮病を使って、つけを踏み倒そうとする奴が
いないか調べにね」
「普通、そこまでひねくれるか?」
「おい、金だ、わかるな、おれに、返せ!うぉう!」
「さあ、いらっしゃい」新たな患者が看護婦に付き添われて入ってきた。
「おい、金だ、すぐよこせ!」と、クワーク。
「できる限りのことはやっている。すぐ戻ってくるからな」と、シスコ
大佐。
◇
ドクターベシアは、医療室で、シスコ大佐に報告した。
「これは、人工的なウイルスです。自然のものにしては、ヌクレオチド
の連鎖が完璧過ぎます」
「じゃあ、カーデシアが遺伝子工学で作り出したものか?」と、シスコ
大佐。
「いえ、それが、カーデシアの遺伝子工学の特徴として、独特の単一形
質からなる結合をDNAに作ります。このウイルスには、それがありま
せん」
「じゃあ、誰が作ったのだ?」
「それで連邦に問い合わせ、登録されているDNAの全製造技術を照会
しました。決め手は、たんぱく質の連鎖です。この連鎖は」
「ドクター、早く結論を言ってくれ!」
「作ったのはベイジョー人です。カーデシアの占領時、このウイルスで
破壊活動を企んだんでしょう」と、ドクターベシア。
「パワーコアのエネルギーの減少から推測すると、作ったのは、ステー
ションの建設時だわ」と、キラ。
「つまり、18年前ですね?おそらく、工事のどさくさに紛れて、装置
を仕掛けたんでしょう。その頃は、私は、保安担当ではなかった」と、
オドー。
「しかし、せっかく装置を取り付けておきながら、なぜ、作動させなか
ったのかな」と、シスコ大佐。
「忘れたんでしょう」と、オドー。
「いいえ、おそらく、作動させる前に、殺されたか、捕虜になったのよ」
と、キラ。
「このウイルスの作り手を見つけねば。君が頼りだよ」と、シスコ大佐。
「ああ、でも、18年もたっているんですよ」と、キラ。
「それにウイルスを作った人間が我々を助けてくれるとも限らない」と、
オドー。
「治療薬の処方さえわかればいいんだ」と、シスコ大佐。
「治療薬を作っていなければどうします?」と、キラ。
◇
キラ少佐は、ベイジョー司令室に問い合わせた。
「きっと、地下活動に参加していた遺伝子工学に詳しい人よ」と、キラ。
「18年前ね、もしかしたらディーコンエルグかもしれないわ」と、ベ
イジョー司令室のガリス。
「その人、どこにいるの?」
「カーデシアの収容所に入れられていたらしいけど」
「どこの収容所なの?」
「メロスセブン捕虜収容キャンプよ。でも、それも、9年前の話」
「今どこにいるか、全然わからないの?お願いよ、ガリス、大事なこと
なの」
「ごめんなさい、キラ、でも昔のことだから、これ以上は」
ジェイクは、病室で、看護婦に何かを伝えようとした。
「どうしたの、ジェイク?」
「光が廻っている、光が廻っている」と、ジェイクが看護婦を引っぱっ
た。
「夢の中から、炎が上がっている」
オブライエンは、ベッドの上で苦しんでいた。
「ものすごい高熱だわ」と、看護婦。
「道をあけないと、道をあけて!」と、ジェイク。
「ドクター、至急こちらへいらしてください」
ドクターベシアは、医療室に戻ると、シスコ大佐に報告した。
「オブライエンは、どうだ」と、シスコ大佐。
「あまり良くありませんね。ウイルスが自律神経まで犯しているんです」
と、ドクターベシア。
「食い止められないのか?」
「神経を刺激しても反応がないんです。第二次感染を防ぐため、30c
cコロファイジンを投与しましたが、熱が全然下がりそうもないんです」
「助かる見込みは?」
「はあ、ウイルスをたたく方法が見つからない限り、もって、あと12
時間でしょう」
「何も打つ手はないのか」と、シスコ大佐。
「ありません」と、ドクターベシア。
「塩基対を揺さぶったり、連鎖を切断したりしてみたんですが、何をや
っても効き目がないんです。司令官、他にも7人の患者がオブライエン
と同じ症状を示し始めています。これから、どんどん、増えてくるでし
ょう」
「ともかく、がんばってくれ。早く、キラ少佐がこのウイルスを作った
人間を突き止めてくれるといいんだがな」
「私もその人間に会ってみたいです。天才にしか、このウイルスは作れ
ない」
「わかった、そう、取り計ろう」
キラ少佐は、コンピュータでベイジョー公文書館に問い合わせた。
「ベイジョー公文書ファイルにリンク完了」と、コンピュータ。
「メロスセブン捕虜収容キャンプのファイルを検索」と、キラ。
「完了」と、コンピュータ。
「ディーコンエルグという囚人のファイルはあるかしら?」と、キラ。
「存在します」
「彼の経歴を」
「ディーコンエルグ、遺伝子工学者、ベイジョー地下運動のハイガーメ
タセクトの元メンバー、脱走を図り殺害されています。宇宙暦3935
5。死亡証明書もファイルに存在します」
「仕事は捗ってないようだな」と、シスコ大佐。
「幽霊と追いかけっこ」と、キラ。
「12時間以内に捕まえてくれ」
「捕まらなかったら?」
「患者が死に始める」
「コンピュータ、ディーコンエルグの死亡証明書を見せて」と、キラ。
「死亡の証明は誰?」
「死亡の証明は、サーマクレインによってなされています。ベイジョー
の医療助手です」と、コンピュータ。
「サーマクレインの経歴データを出してちょうだい」
「ドクターサーマクレイン、ベイジョー地下運動のハイガーメタセクト
の元メンバー、宇宙暦46302。メロスセブン捕虜収容キャンプの閉
鎖に伴い、ベイジョーに送還されています。現在の状況不明」
◇
クワークは、店で、ひとりダーボゲームをしていた、
「ダーボ」
「調子はどうだ?」と、オドー。
「今日は、何時間やっても勝てない。ああ、あんたも少し賭けてみない
か?評判に傷が付くと思っているのか?誰にも言わないって」と、クワ
ーク。
「賭けないのは、評判を気にしているからじゃない。実は、知らないん
だよ、どうやって遊ぶのか」と、オドー。
「いつもここにいるくせして、ギャンブルのやり方を知らないのか?」
と、クワーク。
「実は、そうなんだ」
「へえ、それでいつも、つまんなそうなんだな。遊び方なんて簡単なも
んさ。よければ、おれが教えてやってもいいぜ。まず」
「また次の機会に頼むよ。司令官からお呼びなんだ。保安チームのクル
ー全員、例の言語障害にやられてしまったんでね。私が行けば、プロム
ナードの警備がいなくなる」
「ご愁傷さま」
「いいか、へたなまねをするなよ、クワーク、万が一、物がなくなりで
もしたら、即おまえの仕業だということにするからな。よくわかったか
?」
「わかったよ」
「ダーボ」クワークは、ひとりダーボゲームに戻った。
ドクターベシアは、医療室で、コンピュータに命令した。
「コンピュータ、サンプルスリーセブンデルタを分析し、ウイルスへの
抑制効果を報告せよ」と、ドクターベシア。
「分析中、分析完了。サンプルスリーセブンデルタ、効果なし。ウイル
スのたんぱく質症に効果なし。ヌクレオチド連鎖にも全く効果なし」と、
コンピュータ。
「コンピュータ、夜を繰り返せ」と、ドクターベシア。
「理解できません。もう一度、どうぞ」
「朝がやってくるまで、何度も夜を繰り返すんだ」
「理解できません。もう一度、どうぞ」
キラ少佐は、コンピュータでベイジョーデータベースに問い合わせた。
「コンピュータ、ベイジョー医療インデックスにリンクしてちょうだい。
範囲は、そうね、北西地域に限定」
「リンク完了です」と、コンピュータ。
「ドクターサーマクレインの全情報にアクセスして」
「その名前の該当者が見つかりません」
「じゃあ、北東地域で同じ検索を」と、キラ。
「ドクターサーマクレイン、現在は、イルビアン総合医療センターにて、
主任経営者の地位にあります」と、コンピュータ。
「コンピュータ、イルビアン総合医療センターにチャンネルオープン、
主任経営者のオフィスよ」
ドクターサーマクレインは、コンソールから言った。
「ドクターサーマクレインです。で、あなたは?」
「キラネリス少佐よ。現在、ディープスペースナインに勤務しています」
と、キラ。
「ああ、カーデシアの古い宇宙ステーションですね。なにかご用で?」
「あなた次第ね」
「といいますと?」
「18年前に、あなたは、ディーコンエルグに協力して、ここに、言語
障害のウイルスを仕掛けた」
「なんのことだかわかりませんね」ドクターサーマクレインは、通信ラ
インを切った。
「うぅ」と、キラ。
オドーは、シスコ大佐の要請で司令室に来た。
「私は警備のことには自信がありますが、ステーションの操縦を手伝う
となると荷が重いですね」と、オドー。
「君の言うことももっともだ、しかし、もう他に人手がないんだよ」と、
シスコ大佐。
「司令官、司令官、作り手を見つけ出しました」と、キラ。
「治療薬はあるのか?」と、シスコ大佐。
「わかりません。ウイルスのことを持ち出した途端に通話を切られまし
た」
キラは、シャトルの出発の準備をした。
「少佐、いったいどこへゆくつもりなのか?」と、シスコ大佐。
「ドクターサーマクレインと直接、話をつけに行ってきます」と、キラ。
「少佐、ステーションから出るのはよせ。ベイジョー星にウイルスを持
ち込むわけには」
「そんなこと百も承知していますよ、司令官、絶対、星に降りたりしま
せんから、行かせてください」
「だが」
「許可を願います、司令官、最後の手段です」と、オドー。
「ふう」と、シスコ大佐。
「少佐が戻ってくるまで、持ちこたえられればいいんですが」と、オド
ー。
シスコ大佐は、病室にいるジェイクを見舞った。
「ジェイク、具合はどうだ?顔を見て安心したよ。今はまだ、治療法は
見つからないが、安心していろ、かならず助けてやる。おまえを絶対死
なせたりしない。わかるな、おまえを絶対死なせたりしない」
シスコ大佐は、司令室に戻った。
「これを見てください。第5デッキポートに動きがあります、船が発進
しようとしているらしい」と、オドー。
「第5デッキポート、ジャヒールの船だ、彼を呼び出せ」と、シスコ大
佐。
「艦長、君の船の発進は認められない。私は、係留ポットのクランクを
はずすつもりはないぞ」
「つもりはなくても、はずしてもらおうか。今、後部スラスタを1・5
にしたところだ」と、ジャヒール艦長。
「艦長、直ちにエンジンを切れ。船が壊れるぞ」
「パワーは減少していません」と、オドー。
「ジャヒール、エンジンを切れ、これは命令だ」と、シスコ大佐。
「あんたの命令なんぞ、聞く義理はない。私の部下は全員、発病して隔
離された。私だけでも健康なうちに、ここから脱出するんだ」と、ジャ
ヒール艦長。
「君が不安になるのはわかる。しかし、ここにいた方が安全だぞ。もし、
宇宙に出てから発病したら、どうするんだ」
「心配はいらんよ。私は健康だ。あんな病気に早々かかったりはせん。
あくまでも出さない気か?」
「仕方ない、クランクをはずそう。ステーションから離れるのを待って、
トラクタービームで捕らえればいい。しまった」と、シスコ大佐。
「どうしたんです?」と、オドー。
「係留クランクに力が入り過ぎていて、はずれそうにない」
「うあ、うああぁ」と、ジャヒール艦長。
「後部遮断プレートが壊れました」と、オドー。
「メインパワーコアが破裂したんだ」と、シスコ大佐。
「内部燃料棒が壊れたら、船が爆発するぞ」
「そうなれば、ドッキングリングも持っていかれる」
◇
キラ少佐は、シャトルがベイジョー星の周回軌道に入ると、コンピュ
ータに言った。
「コンピュータ、イルビアン診療センターの通話を分離して!」
「通話分離完了」と、コンピュータ。
「生命体の有無を検索して!」と、キラ。
「一個の生命体を確認」
「ロックオンして、転送の準備をしてちょうだい」
シャトルのコンソールにドクターサーマクレインが映った。
「また、あなたか」と、ドクターサーマクレイン。
「こんにちわ、ドクター、いらっしゃるかどうか確かめただけ」と、キ
ラ。
「あなたに話すことは」
ドクターサーマクレインは、シャトル内に転送された。
「ああら、こんにちわ、ドクター」と、キラ。
「なんてことをするんだ。直ちに、オフィスに送り返してもらおうか」
と、ドクターサーマクレイン。
「そうがならないで。すぐに帰してあげるわよ」
◇
シスコ少佐は、オドーに言った。
「ジャヒールとのビジュアルコンタクトを復活させろ」
「だめです。ラインが遮断されています」と、オドー。
「サブグリッドを通して、バイパスを作れないか?外部ピックアップに
切り替えるんだ」と、シスコ少佐。
「OKです。どうやら、消火システムが作動していないようです」
「燃料棒は、あと、15分もしたら崩壊するぞ」
「お疲れのようですが大丈夫ですか?」と、オドー。
「きっと、ウイルスのせいだろう。こちら、シスコ。まだ発病せず私の
言葉がわかるものは、全員、司令室まで来てくれ。ジャヒールの船をド
ックから切り離そう」と、シスコ少佐。
「クランクを爆破したらどうでしょうか?勢いで船がドッキングクラン
クから離れるかも」
「それは現場へ行って、手作業でやるしかない」
「私がやります」と、オドー。
「ありがとう。星を横切ればいい。心臓が止まる前に」と、シスコ少佐。
「何ですって?」
「夢が、叶うんだ、本当の夢が」
「ああ、司令官」
「はあぁ」
◇
キラ少佐は、シャトルをステーションへ向かわせた。
「少佐、これは誘拐ですよ。すぐに帰してください。でないと、一生、
フラントボル刑務所に暮らすはめになりますよ」と、ドクターサーマク
レイン。
「結構よ。でも、今だけ助けてちょうだい。言語障害のウイルスがステ
ーションじゅうに広まっているの」と、キラ。
「しかし、なぜ私を」
「ウイルスを作るのを手伝ったんでしょ」
「いやぁ、私は何も手を貸していない。あれは、ディーコンエルグが作
ったんだ。私は、助手をしていただけだ。もう、ひと昔前のことですよ。
地下活動をしていたのも、半年だけで、すぐ捕まった。私には、何の責
任もありません」
「責任があるなんて言ってないでしょ!私は、ただ、治療薬が欲しいだ
けよ」と、キラ。
「そんなもの、私は知りません。ディーコンエルグからは、何も聞いて
いない」と、ドクターサーマクレイン。
「いいこと、ドクター、大勢の人の命がかかっているのよ。あなたは、
一度このウイルスに関わりながら、みんなを見捨てる気?」
「同情はしますよ、少佐。しかし、私には何もできない」
「あらそう?自分の身に危険が迫っても?」
「どういう意味です?」
「実はね、私はウイルスに感染しているのよ、ドクター。つまり、あな
たも感染したってわけ」
オドーは、司令室でトランシーバに言った。
「誰か聞いているか?こちら、オドーだ。司令官が発病した、誰でもい
いから手を貸してくれ!」
「その声の調子じゃ、ずいぶんパニクっているようだな」と、クワーク。
「クワーク、まさか、おまえがボランティアを買って出てくれるとはな」
と、オドー。
「ほう、誰がボランティアをするなんて言ったよ。ま、謝礼の額は後で
決めよう。さてと、おれは、何をすりゃいいんだ、オドー?」
「第5ポートへ行かなければならない。あと五分で船が爆発するんだ」
「転送してやろう」と、クワーク。
「おまえが?」と、オドー。
「任せておけって。こう見えても、8年間、フェレンギの船に乗ってい
たんだ」
「頼む」
オドーは、転送用パッドに立った。
「艦長がビーム転送をやるのは、何百回も見たよ」と、クワーク。
「見た?じゃ、おまえは実際にはやったことはないのか?」と、オドー。
「行ってらっしゃい!へへへへへ。へぇ」クワークが転送ボタンを押す
と、オドーは転送ポッドから消えた。
「キラ少佐、第7着陸パッドに接近中。司令室へドッキング手続きの開
始を要請」と、通信ラインから声。
「よくぞお帰りで。こっちは人手が足りなくてね」と、クワーク。
「クワーク、司令室で何しているの?」と、キラ。
「うぇっへへへへぇ」
キラ少佐は、ドクターサーマクレインを医療室に連れて行った。
「ここのドクターが行なった、ウイルスの分析結果を見せてください。
治療薬を作るために、いろいろチャレンジしていたみたいですね」と、
ドクターサーマクレイン。
「ドクターサーマクレイン、私は司令室に。ご用があったら、そこの、
星をインパクトして、うう、瞳が赤い緊張を」と、キラ。
「あなたも発病してしまったようだ」
「はぁ」
オドーは、船内でジャヒール艦長の救出にあたった。
「犬、仲間、距離」と、ジャヒール艦長。
「話はあとで聞いてやる」と、オドー。
「オドー、急がないとやばいぞ、その船は、あと一分で爆発だ」と、ク
ワーク。
「ああ」
ドクターサーマクレインは、医療室の電子ファイルにアクセスした。
「ウイルスのたんぱく質症、ヌクレオチド連鎖、よおし、これだぞ、シ
ナプス抑制体だ。さすが、ディーコンエルグだ、たいしたものだ。治療
薬が見つかったようですよ、キラ少佐」と、ドクターサーマクレイン。
「はぁ」と、キラー。
オドーは、船内で噴出するガスに包まれていた。
「あと50秒」と、クワークの声。
「うぇ」
「あと30秒だ、急げ」と、クワーク。
「わかってる、そう、せかすな!」と、オドー。
「あと20秒だぞ」
「ふっ」
「あと10秒」
「ふっ」
「ああぁぁ」
「バッギョーン」オドーが船をエアロックから切り離すと、船体は爆発
した。
「ウウゥゥ、はあ、はあ」と、オドー。
「オドー、クワークより、オドー、まだ生きているか?」と、クワーク。
「おい、そんながっかりした声を出すなよ」
「さあて、今回の謝礼は、いくらもらおうかな」
「うう、あの野郎!さあ、行くぞ、さあ、立て!」
エピローグ
シスコ大佐は、コンピュータに報告した。
「ステーション日誌 宇宙暦 46425・8、ベシアの調査結果を元
に、ドクターサーマクレインが言語障害ウイルスの治療薬を発見。現在、
ステーションじゅうの患者に投与している。事態は正常に戻りつつある」
「すべてもとどおりだな」と、シスコ大佐。
「そうですね」と、オブライエン。
「ブラックコーヒーを頼む!」
シスコ大佐は、レプリケータのコーヒーをひとくち口にするや言った。
「うう、オブライエン!」
(第一_二_一話 終わり)